過度な飲酒が生活習慣病に影響する理由

多量のお酒を習慣的に飲み続けると、胃や肝臓などの消化器系だけでなく、心臓や脳など全身の臓器に障害が起こる可能性があります。飲酒により引き起こされる主な病気として、肝障害や高血圧、脳神経障害(睡眠障害、認知症、アルコール依存症)などが挙げられます。また、アルコールはがんの発症リスクを高める危険因子としても知られています。世界保健機関(WHO)は、お酒は30種類以上の病気の原因であり、200種類以上の病気と関連していると報告しています。
発症しやすい代表的な疾患
肝障害
アルコール性肝障害はアルコールを常習的に飲んでいる人に発症する疾患です。日頃から飲酒量の多い人は、外見は痩せていても、肝臓に脂肪が蓄積され炎症を起こすことがあります。これらの患者が大量飲酒後には、重症のアルコール性肝障害を発症し、命に関わる重篤な状態になることがあります。また、治療せず放置すると、肝硬変や肝がんに進展していく場合もあります。
膵炎
膵炎のうち、アルコールのとりすぎが原因で膵臓に炎症が起こる疾患がアルコール性膵炎です。急性と慢性があり、急性膵炎の4割、慢性膵炎では6割がアルコールが原因とされています。
飲酒と膵炎の関連性は明らかですが、大量に飲酒する人すべてがアルコール性膵炎を発症するわけではなく、体質や食生活なども関連していると考えられます。
脂質異常症
体の中の脂質のバランスが崩れてしまうことを脂質異常症といいます。アルコールの過剰摂取は、トリグリセリド(中性脂肪)の増加につながり、高トリグリセリド血症を招いて急性すい炎のリスクを高めます。一方、いわゆる善玉コレステロールであるHDLコレステロールもアルコール摂取量の増加にともない増加しますが、過度のアルコール摂取は肥満や高血圧を引き起こすため、適量にとどめたほうがよいでしょう。
高尿酸血症
高尿酸血症とは、血液中の尿酸値が高くなった状態です。血清尿酸値7.0 mg/dl以上の場合に診断されます。
血中尿酸値が高いと、析出した尿酸塩が関節や腎臓などの臓器に沈着し、臓器障害を起こします。尿酸塩の沈着による関節炎は痛風関節炎と呼ばれます。
痛風関節炎は急性に発症することが多く、痛風発作と呼ばれます。下肢の関節、特に足の親指の付け根(第一中足趾節関節)に起こることが多く、突然関節が赤く腫れて痛くなり、痛みで歩行が困難になります。
高血圧症
高血圧は、動脈硬化の危険因子であり、動脈硬化を進め、心筋梗塞や脳卒中など心血管疾患の発症リスクを高めることから、治療が必要です。診察室で測った血圧が、収縮期血圧140mmHg以上あるいは拡張期血圧90mmHg以上であった場合、高血圧と診断されます。ただし、脳卒中などの発症率が最も低い「正常血圧」は収縮期血圧120mmHg未満かつ拡張期血圧80mmHg未満とされています。
食道がん
食道は咀嚼された食物が、胃に至るまでの通り道です。長さは28cm前後、太さは2~3cmの空洞状の器官です。胃や腸と同じく多層からできていて、一番内側が粘膜になります。食道の最も内側の粘膜は、粘液を出して食物を胃へ円滑に運ぶ手助けをしています。食道がんは、すべての通り道に発生しますが、とくに真ん中あたりに生じることが多いようです。食道の粘膜が何らかの原因により繰り返し傷つけられることで、正常な細胞ががん細胞に変化して食道がんが発生します。初期では、粘膜上にとどまりますが、進行するにつれて深く浸潤したり、転移が起こります。
飲酒は適量を守ることが大切

適度な飲酒量がおすすめです。
お酒をたしなむときは自分のペースを守り、一気飲みなど無茶な飲み方は避けて、そして何よりも「適量」を守ることが大切です。
空腹の状態でお酒を飲むと酔いが早く回りやすく、胃の粘膜を荒らすなど過度の負担がかかります。おつまみを食べながら飲み、また、強いお酒は薄めて飲むようにしましょう。
なお、たとえ適量であっても毎日飲むのはよくありません。週に1日はお酒を飲まない「休肝日」をもうけて、肝臓を休ませることも大切です。
まずは検診で自分の体の事を知ってください

不安がある方は生活習慣病健診
生活習慣病の早期発見・予防のための健診です。肥満度のチェックをはじめ、高血圧、動脈硬化、心臓病、腎臓病、肝臓病、肺の病気、胃ガン、胃・十二指腸潰瘍、糖尿病等の代謝疾患といったさまざまな病気の早期発見や異常のチェックを行ないます。